『レコードと暮らし』田口史人(著)、夏葉社

この本は、発売時に何かで紹介されていたのを
見て購入していました。
2015年9月(第一刷)発売となっていますから、
まもなく3年が経ちます。
最近、蔵書の整理をしていて見つけ出し、再び読み直してみました(笑)

まず、この『レコードと暮らし』というタイトルを見た時、
内容に全然ピンと来ませんでした(苦笑)
でも読み進めて行くうち、分かって来ました。
かつて、日常の暮らしの中にあふれていた
“音楽目的でないレコード”の意味なのでしょう。

随分昔になりましたが、どこの町にも
普通にあったレコード屋に、
商品として置かれた一般のレコードではなく、
何かの商品にオマケとして付いていたり、
何かの記念で作られて配られたもの、
観光宣伝などで作られたものなど、本当に
いろんな種類の一般市販品でないレコード(ソノシート類)が、
日常に溶け込んでいた時代がありました。
本書では、当時の暮らしの背景を察しながら、
それらのレコードを紹介している訳です。

この本の中身を勝手にお見せできないので、
(思いついた)音楽でない同じ意味のレコード(ソノシート)を
1枚写真に撮ろうとして探したのですけれど、
すぐに見つからなかったため、言葉で紹介しますが
「冷蔵庫の取り扱い説明」の小さなレコードが
手許にあります。

それはナショナル製の冷蔵庫に説明書と一緒に、
むき出しで付けられていたと思われる
昭和30年代後半?の、オレンジ色で
直径7センチ位のペラペラの片面レコード(ソノシート)です。

内容は、まずナショナルのコマーシャル・ソング
「明るいナショナル」が短く流れ、
“霜取りシステム”についての説明が語られていました。
ただ、それだけの内容です。
一度聴けば、もういらないでしょうね。
冷蔵庫の「霜取り」が通じる人も、
それなりの年齢かも知れませんが・・・ (苦笑)

その冷蔵庫も購入後、何年かして廃棄すれば
このレコードは不要でしょうし、
何度も聴いて楽しめるような芸術ものでもないし、
骨董的な金銭価値がある訳でもなく、
持っていたところで、もう何の役にも立たない・・・
そんなレコードですけれど、
日本のある一時代には、このようなものも含めた
実用レコードが、日常生活の中に、
いろんな形で身近に存在していたのです。

田口 氏は、東京は高円寺にある「円盤」という
お店の店主だそうで、私と同世代(ちょっとだけ私のが年下)
ですけれども、上記時代は私として本当に
幼少の時代ですから、生きている間に経験した時間としては、
ほんの少しだけ・・・ リアルタイムでは、
かろうじて体験した世代でしょうか(苦笑)

本書を読んでいて、そのような時代背景を考えた時、
日常のレコード体験のなかった方には、
なかなかイメージも伝わらない気がいたしますが、
田口 氏は、本当に日本のレコード文化を
現物から、よく研究されているのが伝わって来ました。
私達に考えさせるように、
いろんな意味を含んだ資料的な名著です。

関心のある方は、実際の御著書を手にとって
いただくこととして、
あとがき(「送り溝」としている所がまた凝ってますが)に
書かれている内容にも、思うところが沢山ありました。
そのひとつを書かせていただきます。

実際に私も日頃よく感じていることで、
「コミュニケーションの変化」があります。
インターネットも、パソコン通信もない時代に、
多感な少年期を過ごしていますから、
そのギャップに戸惑うことがあるのです。

その上で、極端な言葉でいうと
「コミュニケーションの中に見る、想像力の無さ」
を感じる方の多さです。

この項で田口 氏が書いているのは、
モノそのものの歴史や背景・プロセス等を想像することなく、
ネット検索でピンポイントに得た情報を
「単なるデータ」として見てしまう人のことですね。
しかも、その情報自体に信憑性があるか、
ないかにかかわらず、
自分の価値判断の起点としてしまいます。

このような人は、世代や性別関係なく、
おそらく、その人物の中身の問題だと私は思っています。
何だか政治問題みたいですが(苦笑)
道徳的なこと等も含め、対象にした人やモノの
背景・プロセスといったこと・・・を想像するのではなく、
「自分にとって損か得か」「使えるか使えないか」
という考え方に直結(結果)してしまう人達です。

そんな考え方の人達は、
田口 氏が本書で説明されている、それぞれのレコードの
持つ背景、意味や作られた理由すら
理解しようとしないのかも知れない・・・という感じでしょうか。
少々難しいといいますか、深い意味があるのですけれど、
まぁそういった価値観に“気付いている人のみ”が
味わえる「心豊かな道楽?」なのかも知れないと私は思いました(笑)

高円寺「円盤」店主の田口史人 氏による執筆、
夏葉社からの名著『レコードと暮らし』について、書かせていただきました。

かつての「日本のレコード文化」に御興味ある方には、おすすめの一冊です。

(写真:上)本の右側は、白鶴酒造による
「昭和42年度の暑中見舞いのハガキ」になっているレコード。
田口 氏の著書の中では、このスタイルのように、
厚紙にレコードが貼られたものを「フォノカード」として掲載しています。

通販のAmazonでも御購入できます。

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